
人気、実力ともにナンバーワン! かの有名な呼び名である「七色の声を持つ男」そのままに、アニメでは『かいけつゾロリ』のゾロリ役や大ヒット作『新世紀エヴァンゲリオン』の加持リョウジ、吹き替えでは、エディ・マーフィやウィル・スミス、トム・ハンクスと第一線で大活躍。加えて、TV番組の司会や、三谷幸喜作品などの映画出演とマルチに活動中。なりたい人なら誰もが聞きたい、山寺さんの“声優道”を3回に分けてお送りします。
やまでらこういち…6月17日生まれ、宮城県出身。アクロス エンタテインメント所属。東北学院大学卒業後、俳協の養成所で学び、卒業後俳協へ。1985年声優としてデビュー。以後、声優としてはもちろん、ラジオのDJ、舞台、映画、ドラマ、バラエティ番組などさまざまなジャンルで活躍。子ども向け情報番組「おはスタ」では司会を担当し、大ブレイク。「七色の声をもつ男」としても有名である。
アクロス エンタテインメント
失敗してもいいから、セリフだけは大きな声でしゃべろうと思ってた
俳協の養成所を卒業した後、プロダクションも俳協所属になりました。養成所の同期では6人だったかな。松本梨香も僕と一緒の俳協組でしたね。初めてもらった仕事は忘れもしない、入ったばかりの4月。作品は、劇場用の『キャプテン翼』でした。
ところが僕、「仕事入りました」って言われたときに、いったん断っているんですね。じつは当時、養成所の先輩が旗揚げした「冒険団」という劇団にも入っていて、しばらくは、声優と舞台の二足のわらじでいこうと思っていたわけ。そしたら「冒険団」の旗揚げ公演で「主役をやってくれ」って言われて、だから『キャプテン翼』の仕事の話があったとき、「すみません。ボク、もうすぐ芝居が本番なんです」って断ったら、もうめちゃくちゃ怒られてね(笑)。「ふざけるな! 来た仕事を断るなんてとんでもない! 何様だ!」って話ですよ。まあ今思うと、当然なんですが(笑)。
そうそう、アニメ作品のデビュー作は、『キャプテン翼』じゃなくて、養成所時代にオーディションを受けた『メガゾーン23』。僕が逃した主役は(笑)、NHK教育テレビ『つくってあそぼ』の“わくわくさん”こと久保田雅人さんで、ヒロインが荘真由美さん。ほかには、川村万梨阿さん、富永みーなさん、岡本麻弥さんなんかがいてね。仕事よりもまず、「かわいいコばっかりだあ」なんてね(笑)。みーなちゃんはセーラー服、岡本麻弥ちゃんは高校の試験中だったかな。そんな時代ですよ(笑)。
スタジオで驚いたのは、アニメ自体は、まだ完成してなくて、いわゆるオール線画の状態だったこと。生まれて初めてアニメの声優をやるっていうのに、キャラクターの顔ひとつできてないし、色もない。ただのビーッという線だけです(笑)。もう、なにがなんだかわからなかったなあ。
そう言えば『キャプテン翼』もぜんぶ線画で、どこでセリフを言うのか分からなくてね。先輩の伊倉一恵さんに背中を叩いてもらって、やっとって感じでした。
でも、ド新人ながら思ったのは、失敗してもいいから、とにかくセリフは、大きな声でしゃべろうっていうこと。積極性がないように見られるのはイヤだったんですよ。それがまぁ、ほんとうに失敗に結びついてね(笑)。ナレーションが入るところで「こっちだ! パスだっ!」とか思いっきり叫んだら「オイ、ナレーションだろう!」「それは別録りだ!」ってすっごい叱られたことは、今でも覚えてますよ。
「声優デビュー」はスタート地点。「声優の仕事を続けること」が大事!

羽佐間道夫さん(左)、野沢那智さん(右)と山寺宏一さん(中央)
声優だけで食べていけるようになったのは、プロダクションの俳協に所属して4年目くらいです。いつ仕事がなくなるか分からなかったので、それまで養成所時代からのバイトをずーっと続けていました。ウナギ屋さんなんですが、配達用のバイクで稽古に行ったりして(笑)、居心地はよかったんですよ。
初レギュラーは、『ボスコアドベンチャー』というTVアニメ。「レギュラー1本でがんばってます。なんでもやります! よろしくお願いしまーす!」なんて自己紹介がウケてた時代がしばらくあって(笑)、アニメのレギュラーがだんだん増えてきて、同時にラジオCMや企業の教育ビデオのナレーションなども入ってきた。声の仕事で入るギャラは、最初の頃はないに等しいぶん、仕事が入れば収入は倍々になるわけ。その点ではかなり順調だったんだけど、それは、いいことばかりではなくて、どん底の苦労を味わっていないことが僕の弱点でもあるんですよ。
ただね、プロとして意識しているのは、ひとつひとつの仕事の結果です。前回「声優の世界は実力主義」って話をしましたけど、そこで大事なのは、「向上心」だと思ってる。「向上心」をもっていることも実力のうちだってことですね。
声優に憧れて、声優になろうとする人が多いのは大歓迎。だけど、「声優になる」っていう言葉の意味は、「声優デビュー」じゃなくて、「声優の仕事を続けること」じゃないかなあ。声優デビューはスタート地点。そう思っていると、養成所で学ぶ姿勢も違ってくるでしょう。声優になると、日々いろんな仕事と出会う。そのとき、いかに「向上心」を持って取り組み続けることができるか。志は高くもって、ぜひ僕らの仲間になってくださいね!
山寺宏一 の声優道
第1回 全ての経験を生かすことができる、声優という仕事に出会えて本当に幸せだと思っています
第3回 声優になるには②~「向上心」も実力のうちです~
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柴田秀勝の声優道
第2回 声優になるには①~声優学校や養成所に入る前に必要な“役者の仕入れ”~
野沢那智の声優道
第3回 声優になるには②~技術と感性を兼ね備えた演技者を目指そう~
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第1回 先代ワカメちゃんは初代お天気お姉さん。忙しく楽しくいろんな仕事に挑戦!
第2回 個性的で長持ちする役者を育てる。それが私の生き甲斐です
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第1回 道は長いから、焦らないで。役者は何をするのかを考えてほしい
第2回 社会勉強と人間観察を。そして、いい役者になってほしい


